口腔ケアとは、歯磨きなどで口の中をきれいに保つだけでなく、健康保持や口腔機能向上のためのリハビリなどを含んだ幅広い内容のことをいいます。歯や歯茎、舌、粘膜、入れ歯を含む口の中の清掃、口腔内や口周りのマッサージ、咀嚼や嚥下のトレーニング、リハビリなどが含まれます。虫歯や歯周病などの口腔内トラブル予防だけでなく、健康的な日常生活を送るために口腔ケアは重要なものとされています。

口腔ケアには器質的口腔ケアと機能的口腔ケアの2種類があります。

【1.器質的口腔ケア】

器質的口腔ケア口の中を清潔に保つためのケアのことで、うがいや歯磨き、義歯や舌の清掃などで口の中にある歯垢や食べかすをきれいに取り除きます。口の中の汚れは歯だけでなく、歯茎や舌、頬の内側にもついていて、その中に多くの細菌が繁殖しています。口の中の細菌は歯周病や誤嚥性肺炎などにつながる恐れもあるので普段から口の中を清潔にしておくことが大切です。

【2.機能的口腔ケア】

機能的口腔ケア口腔機能の維持、回復に向けたケアのことです。口腔機能とは、食べる、話す、表情をつくるなど口の働きのことで、口周りの筋肉や舌を動かすことで口腔機能の低下を防ぎます。ケア方法として、口の中や口周りのマッサージ、飲み込む力を鍛えるトレーニングやリハビリなどがあります。体の筋肉と同じように口の筋肉も鍛えなければ衰えてしまいますので器質的口腔ケアと並行して継続的に行うことが大切です。

【メリット1:口腔内トラブルの予防】

適切な口腔ケアを行うと虫歯や歯周病など口腔内トラブルの減少につながります。歯周病によって入れ歯がうまく固定されない、歯茎と入れ歯の間に食べ物が挟まって痛みを感じるなどという症状の改善も期待できます。

【メリット2:誤嚥性肺炎や感染症の予防】

適切な口腔ケアは、口の中の細菌が原因となって発症する誤嚥性肺炎や感染症などの予防につながります。嚥下(えんげ)障害※によって口内の細菌が唾液や食べ物と気管に入ることで肺の中で炎症を起こす誤嚥性肺炎は、高齢者の死因の多くを占める恐ろしい病気です。誤嚥性肺炎の他にも感染性心内膜炎や虚血性心疾患など口内の細菌によって全身疾患を引き起こす恐れがあります。 口の中の汚れや細菌を取り除き清潔に保つことで、これらを発症するリスクを低くします。

【メリット3:味覚改善による食欲増進】

口腔ケアによって舌の汚れをきれいに取り除くことや、唾液分泌が促進されることで味覚が改善する場合があります。味覚は唾液や水に溶けたものしか感知することができないため舌に汚れが厚く付いていると味を感じにくくなります。口腔ケアによって味覚が改善されれば食欲増進が期待でき、低栄養状態や脱水症状の予防にもなります。

【メリット4:コミュニケーションの改善】

口腔ケアによって口と舌の動きが改善されると、発音が良くなり円滑なコミュニケーションが取れるようになります。口周りの筋肉をほぐすマッサージによって笑顔が増える、表情が豊かになるなどコミュニケーションが活発になることもあります。また、口内環境がよくなることで、人と話すときに気になりやすい口臭を減らせるのもメリットです。

【メリット5:認知症を予防する】

口の開け閉めや咀嚼することが脳に刺激を与え、脳の活性化につながると言われています。近年、咀嚼と脳機能に関する研究がたくさん行われ、噛む刺激で脳の記憶を司る「海馬」の神経細胞が増えて認知症の予防につながるなどとも言われています。歯が多く残っている人の方が認知症になるリスクが低いといった研究結果もあることから、口の中の健康が認知症予防に影響すると考えられています。

口腔ケアのポイント

【ポイント1:できることは本人に任せる】

何でも手伝うのではなく、本人ができることは自力でやってもらうようにしましょう。例えば、歯磨きは手指を動かすので良いリハビリになります。できる限り自力で磨けるよう、使いやすい歯ブラシを準備しましょう。仕上げ磨きや磨き残しなどの最終チェックは介護者が行いましょう。

【ポイント2:短時間で済ませる】

口の中を見られることへの抵抗や、他人に歯を磨いてもらうことを不快に感じる場合もあるため、口腔ケアはできるだけ短時間で済ませましょう。高齢者の口の中は乾燥しやすく、違和感を感じやすくなっています。決して無理強いせず、口腔ケアの重要性を理解してもらい手際よく行いましょう。開始前に必要な用具一式を揃えて近くに置いておけば、無駄なくスムーズに行えます。

【ポイント3:安全な姿勢で行う】

安全で無理のない姿勢で行いましょう。あごを上げたまま口腔ケアを行うと水や唾液が気管に流れて誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあります。あごをしっかり引いてうつむき加減の姿勢をとることが大切です。ベッドなどで行うときは、最低でも30度ほど上体を起こして後頭部に枕を入れるなど安全な姿勢を整えましょう。

【ポイント4:口の中の状態をチェックする】

口腔ケアを行いながら、口の中の健康状態を観察しましょう。汚れや食べかすが残っていないか、虫歯や歯茎の腫れ、出血、口臭などを日頃からチェックしておくことで口腔内トラブルの早期発見につながります。何か異常があればすぐに歯科医、歯科衛生士に相談しましょう。

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口腔機能訓練
リタックでの口腔機能訓練の一部となります。嚥下のプロセスである先行期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期の中で問題のある部分を強化するための訓練を紹介します。